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素晴らしい建築を紹介。
ちょっぴり気持ちが豊かにできれば。

2013年6月28日金曜日

三つの美術館/伊丹潤 ~曖昧なスケール~


伊丹潤の連作「三つの美術館」をご紹介。





「 風 」




「 石 」



  
「 水 」



大きなモスクのようでもあり、
手のひらに載りそうな小さなオブジェのようでもある。

3つの美術館を通して、その“感じ”は貫徹され、
明らかに狙われた効果であることを証明する。

そのスケール感のぼやけ方が、
この建物をより一層の神秘的なものにしている。



 どの要素がどんな手法がその効果を
与えているのか具体的に発見できず、もどかしい。






2013年6月2日日曜日

笠間の家/伊東豊雄 ~モノクロの範疇での多弁性~


 伊東豊雄の初期作「笠間の家」






勾配天井と多様な壁の見え方に
バリエーションが与えられていて愉しい。





 曲面壁と勾配天井の関わり。
この関係は変化を与えられながら、建物の端まで伸びていく。



 


天窓が効いている。
射しこむ光も曲面に沿って繊細に流れる。



 


最奥部の寝室は2段の小あがりになっている。
目線が上がることで見え方が変わる。





ダイニングの風景。

 緩やかにひねった袖壁が空間を分かち、
光と風の質と量そして機能を詩的にコントロールしている。
   




 左の黒部分は裏方空間、トイレ。
右の白部分表向空間、書斎。

黒いパネル壁には水周りや収納などのサービス部が
収められるというルールで建物内に統べられている。





リビングの風景。

明と暗のコントラストの大小や濃淡で
各スペースの性格と関わりを語ることができる。


用いられている素材の種類が少ないがゆえに、
この建物はモノクロに見える。

…にも関わらず、そこには静溢なジェントルマンというよりは
なんだか多弁な青年のような振舞があり、
なんだか上手く言い表せないけれど、素晴らしいと感じた。



2013年5月25日土曜日

フロントン・レコレトス/エドュアルド・トロハ ~あらゆる理由を満たした合理解~

僕の好きな建築のひとつ、
エドゥアルド・トロハの「フロントン・デ・レコレトス」をご紹介。


トロハはマドリッドの構造デザイナーで、
コンクリートシェルをつかった直感的な形態をつくることで知られている。

日本ではあまり名前を聞かないが、キャンデラやネルヴィなどと
ともに評される素晴らしい構造家である。





大小ふたつのヴォールトの組み合わせた大空間。
それぞれ弦の端部がスカイライトとなっている。


大きなヴォールト屋根の下は競技場エリア。
小さなヴォールト屋根の下は観客席エリア。
形態と絡み合った合理的かつ知的なゾーニングである。






スカイライトは2つのヴォールトに統一されたルールとして、
単に美学的であるばかりでなく、
客席からスカイライトが逆光にならない構成となる。






ヴォールトがブツかり合っているところは、
反力で互いに支え合っているのでしょうか?

そうであるなら競技場という無柱空間を成立させた
構造的な合理性の意味も極めて大きい。



ひとつのアイデアが多種多様の意味をもつ。
単純なかたちの組み合わせが複雑な効果を生み出す。

これはそんな類まれなる建築として
いまなおその美しさを失わない。





2013年5月20日月曜日

建築する身体/荒川修作 ~止まったエスカレータと建築する身体~




止まったエスカレータを見つけたので、乗ってみた。

このとき感じる不思議な感覚って、
荒川修作のいうところの「建築する身体」なのだろうか?

僕らの身体に画一的な身体の使い方を刻みつけるそのモダンマシン。
僕らは都市化の中で思ってる以上に矯正されている。

「建築する身体」という概念は、日常、常識、一般、既知…を打ち砕く。
そしてそれはついには「死なないこと」につながる、と。